ヒューリスティック評価 – 重要な10項目とヒント

ヒューリスティック評価

ヤコブ・ニールセン氏の『ヒューリスティック』は、全体的なUX(ユーザーエクスペリエンス)監査が可能であることから、デザインチームでは、それを使って人間とコンピュータのインタラクションを評価するのが一般的です。

『ヒューリスティック評価』では、製品のUXに重要なファセット10項目を調査し、それによってデザインチームはユーザーインターフェースやインタラクション内の特定のユーザビリティ問題に集中できるようになります。  

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ヒューリスティック評価(ヒューリスティック 分析)とは

  ヒューリスティック とは、通常、「試行錯誤による問題解決や自己啓発」を指しますが、UXデザインにおける『ヒューリスティック』は、「意思決定やタスクの完了に必要な認知的負荷や精神力」を表します。デザイナーは、ユーザビリティ・テストを使ってヒューリスティックを評価し、修正すべき問題を特定します。

ユーザビリティのヒューリスティックは10項目あり、ヒューリスティック評価ではそれを評価し、製品のユーザビリティ性能を特定します。このユーザビリティヒューリスティックは、ニールセン・ノーマン・グループの共同創設者であるヤコブ・ニールセン氏が、1990年代初頭に考案した「インタラクションデザインの10大原則」に由来しています。

ユーザビリティ・ヒューリスティック10項目

  ヤコブ・ニールセン氏は、他2人のUXとエンジニアリングの専門家の研究に基づいて、以下のようにユーザビリティ・ヒューリスティック10項目を作成しました:

システムステータスの可視化

  デザイナーは、さまざまなインタラクションやユーザータスクのために、システム・ステータス・インジケータを使います。たとえば、携帯電話のバッテリーアイコンには、バッテリー残量のステータスを表示されますよね。このバッテリー残量表示は、電力が十分かどうか、いつ充電すればよいかをユーザーに知らせるのに重要で、これがないと、警告なしに断続的に電池が切れてしまい、エンドユーザーのフラストレーションの原因になってしまいます。

システムの状態を可視化することで、視覚的なフィードバックが重要になります。例えば、ユーザーが、クリックやタップ、ホバー、スワイプなどのコンポーネントを操作したり、フォームを送信するなどのアクションを完了すると、何が起こるのでしょうか。システムは、”何かが起こっていること” や ”タスクが実行されたこと” をユーザーに知らせるために、フィードバックの提供が必須なのです 。

以下のユーザーインターフェースのデザイン要素は、システムの状態を可視化するいい例です。

  • フォームのプログレストラッカー
  • 『読み込み中』のアイコン
  • 「完了』、『警告』、『エラー』などのシステムメッセージ
  • ショッピングカートやテキストアプリなどのバッジ
  • アプリの通知

  デザイナーは、システム状況の更新でユーザーを圧倒しないよう注意し、フィードバックの提供は、適切かつ必要な時のみにしなければいけません。

システムと現実世界の一致

  システムと現実世界の一致には、以下の2つのルールがあります。:  

  • ユーザーの言葉で話す
  • 現実世界の慣習に従う

  まずコンテンツデザイナーは、常に分かりやすい言葉や表現を用いなければなりません。例えば、Facebookの「ニュースフィード」と「写真タグ付け」は、ユーザーの言葉を使った素晴らしい例です。レックス・フリードマン氏とのポッドキャストで、Facebookの初期の幹部であるチャマス・パリハピティヤ氏は、同社がどのように最もわかりやすい名前を選んで、人々がその機能を知るようにしたかを語っています。

言語と密接に関係しているのが、『現実世界での慣例』です。例えば電子書籍が、ページめくりやテキストへのマーカー引き、しおり付けが紙の本と同じようにできるというような、現実世界での体験やインタラクションをデジタル製品でも繰り広げるといったことなどが挙げられます。

システムを現実世界に合わせることで、ユーザーの体験が明白になり、製品のナビゲーションやタスクの完了に必要な認知的負荷が軽減されます。そしてこの明白さは、テクノロジーを学んでいる人々、高齢者、認知障害のあるユーザーにとって特に重要です。

ユーザーのコントロールと自由度

  デザイナーは、【編集】、【取り消し】、【やり直し】、【戻る】、【キャンセル】などを通じて、ユーザーのために出口や出口への誘導を提供しなければいけません。ユーザーが自由に間違いの訂正や、考えを変えたりできるということは、良いUXには不可欠です。

この『自由』は、購入や有料サービスの変更など、金銭的な決定において特に重要です。ユーザーにこのような自由とコントロールを与えることで、製品やその機能を探求することに怖気づくのを最小限に抑え、信頼を築くことができるのです。

一貫性と標準

  「一貫性」と「標準」には、以下のように2つの側面があります:

  • 内的
  • 外的

  内的な一貫性と標準は、UIとコンポーネントに適用され、製品のデザインシステムまたはデザイン言語によって通常は確定されます。デザイナーは、タスクやアクションが常にユーザーにとって確実に明白であるようにするために、この内部の標準に一貫して従わないといけません。

color sample library

外的な一貫性と標準は、例えば、ナビゲーションの引き出しを開くための「ハンバーガー」のアイコンや、ECサイトの「ショッピングカート」のアイコンなどの、世界的に認知されたUXパターンを指します。こういった慣習を破ると、ユーザーは何かしら新しいことを学ばなければならず、その結果、認知負荷が上がってしまいます。

一貫性と標準に従うことで、アクションについて考える必要性が減り、ユーザーは最小限の精神的労力でコンテンツを見つけてタスクを完了することができるのです。

エラー防止

  エラーの防止は、最も重要なヒューリスティックの一つです。特に、間違った銀行口座への振り込みや、誤って何かを削除したりといった不可逆的な行動では、エラーにより大きな苦痛を与える可能性があります。

error mistake wrong fail prototyping

デザイナーは、認知的摩擦と呼ばれる戦略を使って、ユーザーがアクションを完了する前に立ち止まって考えざるを得ないような、何かしらのタスクを敢えて作成します。例えば、【送金】をクリックすると、「金額」、「受取人の名前」、「銀行口座番号」、「支店コード」などを確認するダイアログが出てきて、取引の【確定】か【キャンセル】を選択させることができます。

いいUXデザインは、こうした摩擦点を作り出すことでエラーを防ぎ、場合によっては、例えば最近削除した項目を30日間保存するなど、それを逆手に取ることもできます。

「思い出す」より、「認識する」

  人間は短期記憶に乏しいため、情報の持ち続けるのは大変です。そこでデザイナーは、ユーザーが記憶する必要がないように、コンテンツを表示したり、呼び出したりできるようにしなければなりません。例えば、ECプラットフォームでは、配送先や請求先の情報を保存しておけば、チェックアウトの際にそれを思い出す必要がないですよね。

このコンセプトには、ユーザーが製品を使うためにドキュメントを参照したり、チュートリアルを見たりする必要がないように、デザインをシンプルにすることも含まれます。なのでデザイナーは、ユーザーのタスクを完了をサポートすべく、フォームラベル、メニュー項目、ツールチップ、プレースホルダ文字、その他のリマインダーを使います。

柔軟性と使用効率

  柔軟性と使用効率によって、タスクやアクションを実行する方法が複数提供され、ユーザーは自分のタスクやアクションを速やかに完了することができます。この原則の最も良い例が、「コピー&ペースト」です。アプリケーションによって異なりますが、ユーザーには通常、選択肢が以下のように3つあります:

  • アプリの主要なナビゲーション、【編集】→【コピー】、【編集】→【貼り付け】を使う
  • マウスの右クリックで【コピー】、右クリックで【貼り付け】を実行する
  • キーボードショートカットを使う、【⌘/Ctrl】 + 【C】(コピー)、【⌘/Ctrl】 + 【V】(貼り付け)

  また、インスタグラムの利用者には、ハートマークや「いいね!」のアイコンをタップする代わりに、画像をダブルタップして「いいね!」を押すという方法もあります。

ユーザーが初めて製品を使い始めるとき、一般的に最もわかりやすいデフォルトのオプション、つまりInstagramの場合はアプリのナビゲーションやアイコンを使いますが、慣れてくると、ショートカットを使って効率を最大化するようになります。

美しさとシンプルなデザイン

  ユーザーが最も重要なコンテンツとアクションに集中できるように、美的感覚に優れたシンプルなインターフェースでないといけません。例えば、あるECストアがWebサイトに広告を掲載しないのは、A)見た目がごちゃごちゃな UI になるから、B)競合他社の広告が表示され、ユーザーが別のオファーに移動してしまう可能性があるから、などの理由が考えられますね。

メールリストに登録する」「この製品を購入する」「Twitterでフォローする」「Facebookで ”いいね!”を押す」「デモを予約する」など、企業はあらゆる手段でユーザーを獲得しようとウェブサイトやランディングページにCTA(Call To Action)を過剰に設けていますが、選択肢が多すぎると、ユーザーは逆に離れていってしまいます

なのでデザイナーは、ユーザーの主な目標やタスクをサポートするコンテンツを優先し、無関係で邪魔な UI エレメントは排除しなければいけません。  

ユーザーによるエラーの認識、診断、回復をサポートする。

  エラーメッセージは、ユーザーへの問題警告だけでなく、その問題を解決するための簡単な解決策を提供する必要があります。例えばGoogleのマテリアルデザインのスナックバーでは、ユーザーが誤ってメールをアーカイブしてしまった場合に備えて、【元に戻す】のアクションが追加されています。

GoogleのGmailでは、メールの送信後に、スナックバーで【送信取り消し】ができるようになっており、「ファイル添付を忘れてしまった! → 【送信取り消し(Undo)】あーよかった。ありがとう、Gmail!」のようなリカバリーができるようになっています。

その他、デザイナーがユーザーのリカバリーをサポートする例としては、以下のようなものがあります:

  • お役立ちリンク付きの エラー404
  • 解決策へのリンクを含むエラーメッセージ
  • 入力フィールドのエラーメッセージと、問題を解決するための明示的な指示

ヘルプとドキュメント

  誰だって、今やっていることを離れてドキュメントを読むのは好きではないですが、問題を解明して解決策を見つけるには、それをしなければいけないことがよくあるのです。デザイナーは、ウォークスルー、ツールチップ、ポップオーバー、チャットなどを使って、作業中のページを離れずに答えを見つけられるようにすることで、ユーザーをサポートすることができます。

Google Docsには、ユーザー向けのヘルプのポップアップがあり、そこで製品のドキュメントを検索して解決策を見つけることができます。さらに、Google Docsのコミュニティへのリンクや、Googleに直接問題を報告するオプションも用意されています。

ヒューリスティック Google Docs

ドキュメントは、検索と案内が簡単で、かつユーザーへの便利で実用的な回答の提供が必要です。UXPinのドキュメントでは、最も検索されたヘルプのカテゴリと検索オプション(オートコンプリート付き)がユーザーに提供されており、各セクションでは、画像、GIF、文書による説明が提供され、ユーザーが必要なものを見つけられるようになっています。

ヒューリスティック評価の方法

各ユーザビリティ原則を理解した上で、いよいよヒューリスティック評価の実施に移りましょう。 ヒューリスティック評価を行うプロセスは、業界やデザインプロジェクトに関係なく全部同じです。

  • フェーズ1 – プランニング:デザインチームによる、ユーザーリサーチを用いたヒューリスティック評価のマップ作成、および、タスクの委任と目標の確定。
  • フェーズ2- 実行:ヒューリスティック評価の実行。
  • フェーズ3- レビュー:評価の総括とレビュー、および、アクションプランのデザイン。

プランニング

まず、チームはどのヒューリスティックを使って、どのように評価するかを確定しますが、ヒューリスティックは、市場調査、過去のユーザーテスト、そして慎重なデザインの原則に基づいて慎重に選択されるべきです。

次に、チームは、評価を担当するユーザビリティの専門家である『評価者』を選ばなければいけません。評価者は、バイアスを減らし、より多くのユーザビリティの問題を発見するために、通常2人1組で作業を行い、一回につき1つのヒューリスティックしか評価できません。複数のヒューリスティックを同時に評価すると、エラーが発生しかねないですからね。

実行

  1. まず、使用するヒューリスティックとシステムの機能を評価者に理解してもらうために、評価者に説明を行います。
  2. 次に、評価者はその仕組みを理解すべく、システムと対話します。
  3. 評価者は、あらかじめ決められたヒューリスティックに基づいてシステムを評価し、使い勝手の問題点があれば指摘します。

レビュー

評価者は、問題点の解決のための推奨行動とともに、調査結果を発表します。チームはそれを1つのマスター文書にまとめ、ユーザビリティの問題を解決するためのタスクを作成し、優先順位をつけます。

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