FinTech(フィンテック)のレガシーシステムの対処方法とは?
多くの企業が、レガシーシステム(旧式システム)とそれに伴う頭痛の種からの解放に四苦八苦しています。時代遅れのエコシステムには、UX(ユーザーエクスペリエンス)やデジタルイノベーションなど、多くの課題があるのです。
チャレンジャーバンク(銀行免許をとって銀行サービスをはじめる事業者)が従来の銀行と競争し、洗練されたテクノロジーを採用し、顧客により速く商品を提供できる理由は、レガシーテクノロジーの負担にあります。
本記事では、レガシーシステムが抱える課題と、それがビジネスやCX(顧客体験)に及ぼす悪影響について探ります。また、こうしたレガシーの負担がないFinTech企業が従来の金融サービス事業者をどのように凌いでいるか、そして従来の金融サービス事業者が現代化のために何ができるかを見ていきます。
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レガシーシステムとは
レガシーシステムとは、組織がまだ使っているハードウェアやソフトウェア、その他の時代遅れのテクノロジーのことであり、レガシーシステムを構築した企業は、大抵もはやビジネスを行っていないか、製品のアップデートやサポートの提供を停止しています。
アップデートやサポートがない場合、組織はレガシーシステムの維持と運用のためにIT専門家を雇わなければなりません。そのようなシステムのための人材プールは小さいので、労働力は高価であり、さらに部品は手に入りにくいので、大抵は高いコストでハードウェアの代替品を製造しなければいけません。
レガシーシステムは、かなりのスペースも必要です。多くの組織では、30~50年前のシステムで運用されており、そのようなレガシーシステムのハードウェアはかさばるため、効率的な運用と維持には大きなスペースが必要となります。またデータの整合性や、システムクラッシュ時にすべてを失わないようにすることにも気を配らなければなりません。なんせレガシーシステムはクラッシュしますからね!
銀行部門や政府機関では、いまだにレガシーシステムが広く使われています。レガシーシステムは維持費が高いだけでなく、セキュリティ上のリスクもすごいです。
Forbesの記事によると、米国連邦政府のシステムのほとんどが時代遅れになっており、例えば米国財務省のシステムは「51年もの」と最も古いシステムの一つで、次いで保健福祉省の「50年もの」となっています。
レガシーシステムとUX
このような技術的な問題は、粘着テープとガムで固定されたバックエンドのために優れたUX(ユーザーエクスペリエンス)をデザインしようとするUXデザイナーの課題となっており、そしてレガシーシステムには、製品チームにとって以下のような重要な課題がいくつかあります:
- 劣悪なパフォーマンス:フロントエンドのアプリケーションは、レガシーシステムへのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の呼び出しを待たなければいけない。
- スケーラビリティの限界:レガシーシステムがイノベーションを阻害している。
- お粗末なクロスプラットフォーム体験:モバイルバンキングアプリとデスクトップアプリケーションでできることが制限されている。
- 予算の制約:レガシーバンキングシステムは高価である、つまり、UXやデジタル製品のイノベーションに回すことができる貴重なリソースを消費していることになる。
- サイロと官僚主義:動きの速いFinTechスタートアップやテクノロジーを取り入れた金融機関との競争が難しくなる。
- セキュリティ上の制約:レガシーシステムは攻撃に対して脆弱であり、それでさらに複雑さと制約が増す。
FinTechを成功に導く要因
FinTech製品は、レガシーシステムを運用する組織と同じ問題を解決しますが、制約が少ないため、競争することができます。 ここでは、FinTechが数十年の経験と専門知識を持つ多国籍金融機関を凌ぐ方法をいくつかご紹介します。
1. FinTechの動きは速い
市場投入までのスピードは、FinTechの最大の強みの1つです。最新のテクノロジーや効率的なワークフローがあり、サイロや官僚主義がないため、FinTech製品チームはイノベーションを起こし、プロジェクトを速やかに提供することができるのです。
また、FinTech企業はML(機械学習)、ブロックチェーン、AI(人工知能)などの新しい技術を自由に試して採用することができ、商品の品質と顧客満足度を大幅に上げることができます。
この効率性により、Robinhoodのようなアプリ優先の投資商品や、Monzo、Chime、Nubankなどのデジタルバンキング提供会社が成功を収めています。彼らは、絶えず革新を続ける洗練されたアプリケーションを通じて、顧客に同等の金融商品を提供しているのです。
従来の金融機関は、市場投入が遅く、迅速で機敏なFinTech組織から常に2歩は遅れているため、競争に勝てないのです。
2. ユーザー中心
FinTech企業は、意思決定とイノベーションにおいて、ユーザー中心の考え方を採用しています。彼らは、最新のデジタルソフトウェア開発、特にUXとデザイン思考に通じているため、従来の金融機関よりもユーザーのニーズがよくわかっています。
このユーザー中心のアプローチにより、FinTech企業は顧客のニーズを優先し、期待に応えるコアとなるバンキング製品に集中することができ、より良い信頼、採択、定着を生み出すことができるのです。
3. より良いデータ分析
レガシーシステムの金融機関にとって、データの完全性と品質は重要な問題です。レガシーシステムは、全体的なリアルタイム分析を妨げ、それによって意思決定とイノベーションに遅れが出ます。
一方、最新のFinTech企業では、高品質のリアルタイムでのエンドツーエンド分析により、問題や機会を特定することができます。
このような貴重なインサイトにより、ステークホルダーは、企業のビジョン、ロードマップ、顧客の期待に沿った賢明な意思決定を行えるのです。
4. UXリサーチとユーザーテスト
UXリサーチとユーザーテストは、FinTech企業で採用されているユーザー中心のデザインの一面です。このような貴重なUXインサイトと質の高い分析を組み合わせることで、FinTech企業はより詳細で全体的な顧客のペルソナを手に入れることができます。
このように顧客の行動を深く理解することで、FinTechのデザイナーは、独自のビジネスチャンスを特定しながら、ユーザーのニーズを満たす製品やサービスの優先順位を決めることができるのです。
5. 機能横断的な製品開発
うまくいっているFinTech企業の多くは、アジャイル環境と機能横断的な製品開発チームを利用しています。このような現代のワークフローで、サイロの最小化やチームの調整、さらにエラー(UX負債/技術的負債)の削減や、より速くて正確なプロジェクトデリバリの促進が実現されます。
また、FinTech企業はリモートワーク環境に精通しており、グローバルな人材プールを活用し、より迅速に人材を確保することができます。
従来の金融機関では、サイロ化が進み、規制要件や会社の方針により、人材の採用やチーム作りに時間がかかっていました。
レガシーシステムの現代化にデザイナーができること
1. 測定とレポート
以下のような測定とレポートは、レガシーシステムの現代化には欠かせない要素です:
- UX監査:レガシーシステムに関連するユーザビリティの問題を特定し、無策の年間コストを測定する。
- カスタマージャーニーマッピング:FinTech Magazineは、高速カスタマージャーニーの最適化を中心としたレガシーシステムの近代化に対する3つのステッからなるアプローチを推奨している。
- ユーザーテストとUXリサーチ:テスト、インタビュー、リサーチを通じてユーザーを理解するために、より多くの時間をかける。
- UX競合分析:競合他社について調べ、顧客がなぜその製品を選んだのかを学ぶ
- サービスサファリ:チームメンバーに自社製品や競合他社製品を使用してもらい、ユーザー視点でのインサイトを得る。
こういった方法論の使用は、最初のステップに過ぎません。デザインチームは、このようなインサイトを用いて、ステークホルダーに定量的なデータを提示する必要があります。以下に例を挙げましょう。
レガシーシステムによるUXの低下がもたらすコストは、そして現代化によって期待できるリターンとは?
Talabatの製品チームは、デザインシステムへの投資獲得ために戦ったとき、フロントエンドの負債にかかるコストを中心にビジネスケースを構築しました。チームは、デザインシステムを使う場合と使わない場合のUI開発にかかる時間を測定しました。その結果、Talabatのフロントエンドの負債が大幅に削減され、それによってステークホルダーを説得し、製品のデザインシステムへの投資を得ることができたのです。
問題と解決策には、ビジネスケースをサポートするための数字が含まれていなければなりません。ステークホルダーは、以下のような評価するためのメトリクスやKPI(重要業績評価指標)を見たいのです。
- 問題の状態と規模
- ソリューションが数値を改善する方法
2. デザイン思考を用いた効率的な優先順位付け
デザイナーは、デザイン思考を使って、プロジェクトの優先順位決めやビジネス価値を最大化する機会の特定を行うことができます。望ましさ、実行可能性、実現可能性のバランスを見つけることは、長期的な成長と成功を持続させる革新的な製品のための効果的な研究手法です。
- 望ましさ:顧客にとって「要る」ものか「欲しい」ものか。人は「要る」がないと生きていけないから、そこにより価値がある
- 実行可能性:会社にその余裕があるか、ビジネスとして成立しているか。
- 実現可能性:構築のためのリソースがあるか?ビジネスに適しているか?そして、実現までにどれくらいの時間がかかるか?
この三位一体の芯の部分を見つけることで、顧客ニーズを解決しながらビジネス価値を最大化することができます。成功には、組織全体がデザイン思考とUXの原則を受け入れなければならないのです。
デザイン提唱やデザイン思考のワークショップは、チームメンバーやステークホルダーの賛同を得、現代のユーザー中心的な考え方に舵を切るために非常に重要です。
レガシーに制約のある機関がこうしたデザイン思考の原則を採用すれば、ユーザーやビジネスを犠牲にしてまで「古いやり方」を正当化するのは難しくなります。
3. 信頼できる唯一の情報源(Single source of truth)の作成
レガシーシステムを含め、多くの組織がいまだにデザインシステムなしで運営されています。「現代的」なデジタル決済の大手であるPayPalでさえ、社内製品にデザインシステムを採用したのは2019年になってからだそうです!
デザインシステムは、組織全体で「信頼できる唯一の情報源(Single source of truth)」を確保することができます。製品開発ワークフローを効率化し、結束力と一貫性を最大限に高めることで、ユーザビリティの問題が軽減され、デザイナーはプロジェクトごとにコンポーネントを構築するのではなく、ユーザーの問題解決に集中することができます。
信頼できる唯一の情報源(Single source of truth)では、企業の従来の課題を解決できませんが、動きの遅い金融機関にとって重大な問題である、ワークフローの最新化や、市場投入までの時間短縮のための一歩となります。
UXPin MergeによるDX(デジタルトランスフォーメーション)
UXPin Mergeは、レガシーシステムを現代化して市場投入までの時間を短縮するための優れたツールです。2019年にUXPin Mergeを採用した後、PayPalのプロダクトデザイナーは、以前より8倍速くUIを構築できるようになりました。
また、Merge は PayPal の開発プロセスに革命をもたらし、UX チームのメンバーを新たに雇うことなくデザイン出力を拡張しました。これは、予算の制約に苦しんでいる組織にとって重要な要素です!
デザイン・開発の同期化
PayPalのUXリードEPXであるエリカ・ライダー氏は、MicrosoftのFluent UIデザインシステムを選択しました。DSチームはカスタムコンポーネントとテンプレートを作成し、デザイナーは要素をドラッグ&ドロップするだけでUI(ユーザーインターフェース)を構築できるようにしました。彼女が言うように、”パチパチ留める “タイプのデザインです。
PayPalはMergeを使ってFluent UI ReactライブラリをUXPinと同期させたので、デザイナーはすべて同じコンポーネントを使えるようにしました。また、React のプロップを使って、デザイナーがUXPinのプロパティパネルで調整するスタイルとインタラクティビティの制約を設定しました。
デザインハンドオフの効率化
Mergeのデザインハンドオフはシームレスで、ほとんど存在しません。多くの組織が新製品や新機能をリリースする際に対処する混乱した状況とは大違いです。
デザイナーとプログラマーが同じコンポーネントライブラリを使うため、ほとんどのフロントエンド開発はコピー&ペーストとデザインに合わせたプロップの調整です。UXPinにはJSXのコードがあるので、デザイナーもそれをコピーできるのです!
最小限のデザインとゼロからのコーディングにより、エラーや技術的負債、市場投入までの時間が削減され、連携とUXがよくなります。
時代遅れのビジネスプロセスやレガシーシステムが、UXチームの競争力や顧客の期待に応える能力に影響を及ぼしていませんか?UXPin Merge を使って、製品開発ワークフローを強化し、より優れたUXを顧客に提供するための信頼できる唯一の情報源(Single source of truth)を作りましょう。詳細およびアクセス権のリクエスト方法については、Merge ページをぜひご覧ください。