DesignOpsのトップフレームワーク – サロメ・モルタザヴィ氏(SiriusXM)編
2022年3月に開催されたUXPinのデザインバリュー会議では、世界的第一線の企業におけるデザインとDesignOpsを理解すべく、デザイン業界のリーダー5人を招待しました。
サロメ・モルタザヴィ氏は、フォーチュン500に名を連ねる複数の企業で、「サイロを取り払い、アウトプットではなく、顧客の成果に焦点を当てたチーム編成」をサポートした経験から、その見解と経験を語っていただきました。
彼女は現在、SiriusXMでDesignOpsのディレクターとして働いています。彼女のデザインバリュー会議での講演では、企業内でのDesignOpsの維持・拡大における賛同を得るための重要な要素である、DesignOpsとビジネス的インパクトの証明についてお話頂きました。
DesigOps初心者へ向けたアドバイス
サロメは、DesignOpsの初心者へのアドバイスから話を始めますが、これは、戦術的および戦略的なイニシアチブに重点を置くのではなく、「モグラたたき」的な事ををしている経験豊富な実践者にも当てはまることです。
最初のアドバイスは、「イエスマン 」にならないようにすることです。インパクトを与えようとするあまり、多くのDesignOps実践者は、早い段階で何にでも「はい」と言うという間違いを犯してしまいます。このアプローチは、DesignOpsをあちこちに引っ張ってしまい、チームの焦点と価値に悪影響を及ぼします。
価値を見出す
「私たちが行うことの核心はどれも経歴に関係なく、すべては価値主導、つまり価値とビジネス的インパクトの提供に集約されるのです。」 サロメ・モルタザヴィ氏(SiriusXM社 DesignOps担当ディレクター )
サロメによれば、ビジネス価値におけるものは全て2つの方法で現れます:
- コスト削減
- 収益増加
DesignOpsの実践者は、DesignOpsの影響の測定に正しいメトリクスの使用が必要です。パトリツィア・ベルティーニ氏は、メトリクスを【有効性】と【効率性】の観点から確定することで、このDesignOpsのフレームワークを簡素化しています。
効率性と有効性
- 有効性:行動と「正しい」方法で仕事をすることに基づく「定性的」な評価基準
- 効率性:数値、割合、比率で測定、「定量」化できること
パトリツィア・ベルティーニ氏のフレームワークの詳細については「DesignOpsのROI:DesignOpsの影響の定量化に向けたポイント」をぜひお読みください。
パトリツィアの簡略化されたフレームワークを用いても,DesignOpsの実践者は有効性と効率性を測定し,焦点を見出すために多くの作業を行わなければなりません。サロメが指摘するように、DesignOps部門の70%は1名で構成されており、そのことが、方向性が定まらず、どこから手を付けていいのかわからないという事態を引き起こしています。
聞き取りと書き取り
サロメは、DesignOpsの実践者は、飛び込んで行動を起こすのではなく、一歩下がって、1対1のインタビューなど、デザインチームの話を聞いて、組織の問題を理解しパターンを特定することを推奨しています。
数週間から数カ月かけて、全体像、空間、組織の基本的な慣行、そして人を理解することで、会社の組織的、体系的な問題が明らかになってくるのです。
このような問題を理解して明確にすることで、DesignOpsの実践者はリーダー、チームメンバー、およびステークホルダーとすぐに信頼関係を築き、DesignOpsが成長するためのポジティブな基盤を作ることができるのです。
彼女は、DesignOpsの初心者にも、心機一転、新たな方向性を模索するエキスパートにもこのアプローチは有効だと言います。
DesignOpsのフレームワーク:デザイン成熟度指数
サロメのお気に入りのDesignOpsフレームワークの一つとして、デザイン成熟度指数がありますが、特に新デザインフロンティアモデルで、以下の成熟度の9つの次元を調べるものです:
- デザインチーム
- 主要なパートナー
- 役員及び従業員
- デザイン運営
- デザインシステム
- デザイン戦略
- ユーザー調査
- テストと学習
- UIデザイン
この報告書では、デザインが組織に与える最も重要な影響について、以下のように考察しています:
- 製品の使いやすさ
- 顧客満足度
- 収益
- プロジェクト固有のメトリクス
- コスト削減
- 市場投入までの時間
- コンバージョン又はファネルメトリクス
- 従業員の生産性
- ブランド・エクイティ
- 新市場への参入
- デザイン特許/IP
- バリュエーション又は株価
デザイン成熟度指標は、多くのテーマと問題を生み出します。その中でDesignOpsが解決しなければならないのはいくつかありますが、他はデザインリーダーが担うことになります。
サロメは、これらの問題を組織の構造に応じて2つかそれ以上の「バケツ」に正しく振り分けることが重要であると述べています:
- DesignOps(デザイン組織運営)
- デザインリーダー/デザインチーム/製品(デザインプラクティス運営)
運営メニューツール
バケツを仕分る方法のひとつに、運営メニューツールを使ってアクティビティをいくつかのカテゴリーとサブカテゴリーに割り当てる方法がありますが、サロメは通常、以下の2メニューを作成します:
- デザイン組織運営:DesignOpsの活動
- デザインプラクティス運営:デザインチーム、リーダーシップ、製品の活動
この運営メニューツールの説明と、様々なバケツのグラフィックは、彼女のデザインバリュー会議の講演の12分48秒あたりを是非ご覧ください。
バケツがいっぱいになったら、次はDesignOpsロードマップを計画し、焦点を絞る番です。
DsignOpsのロードマップの作成
サロメは、成果ベースのツールを使って、一般化された以下の3つの時間軸でDesignOpsのロードマップを構築しています:
- 今
- 次
- 後
このような時間軸によって、DesignOpsの実践者はいい加減な締め切りを避けることができ、DesignOpsは、この柔軟性により、さまざまなチームで試験的に行っているソリューションを試すことができます。
ロードマップには5つのカテゴリーが含まれなければいけません:
- 目標又はOKR(目標と主な結果)
- 時間軸
- 解決すべきテーマ又は課題
- 成功度又はKRSの尺度
- パーキングロット(一旦保留にして脇に置いておける事項)
パーキングロットは、ロードマップにないけれども、将来のアクションが必要なタスクやアクティビティを記録しておくためのものです。
BML(構築、計測、学習)
DesignOpsロードマップの実行のために、サロメは人気の高いデザイン思考手法であるBML(構築、計測、学習)を運営プラクティスに適用しています。
彼女は、DesignOpsの実践者がプロセスやソリューションを進化させる際に、知識に基づいた決定を下すためにBMLで学習することの重要性を強調しています。
サロメのDesignOpsフレームワークが実際に使われている例は、彼女のプレゼンテーションの18分00秒からご覧になれます。
サロメのDesignOpsリソース
- 著書: Liftoff: Practical Design Leadership to Elevate Your Team, Your Organization, and You
- 著書:Lean UX
- レポート: The New Design Frontier
- コミュニティ: DesignOps Assembly
特典:IBM、Salesforce、Delivery Heroの6人の業界エキスパートの執筆による無料eBook – DesignOps 101: Guide to Design Operations
UXPin MergeによるDesignOpsの実現
デザインプロセスとワークフローを効率化するツールを見つけるのは、DesignOps戦略の成功には非常に重要であり、デザインのズレ、連携、一貫性、結束力などは、実践者がしばしば克服しなければならない問題です。
UXPin Mergeを使用すると、DesignOpsは単一のコードベースのデザインソリューションでこういった中核的な問題を解決することができます。Mergeでは、レポジトリからUXPinのエディタにコンポーネントライブラリを同期できるため、デザイナーはエンジニアと同じUI要素を使用して完全に機能する高忠実度のプロトタイプの構築ができるのです。
この信頼できる唯一の情報源(Single source of truth)は、すべてのデザインチームが同じコンポーネントライブラリを使用し、一貫性と結束力が最大限に高まり、デザインのズレが排除され、手直しが削減されるということです。
UXPin Mergeを使用すると、デザイナーとエンジニアが同じ言語で会話できるため、デザインのハンドオフがスムーズになり、市場投入までの時間が短縮され、DesignOpsにプラスのRO(投資対効果)がもたらされるのです。