DesignOps – デザインワークフローとオペレーションの改善方法
市場競争が激化する中、優秀なデザイン人材を採用するのは簡単なことではありませんが、経験豊富で熟練した人材を一箇所に集めるというのは、成功の一部に過ぎず、とりわけ、繁栄するプロダクトデザインチームの構築には、DesignOps(デザインオペレーション)にも投資が必要です。
DesignOps の役割を理解し、自身が DesignOps のリーダーにふさわしいかどうかを確認するのに役立つ、DesignOps に関する電子書籍が執筆されました。ぜひご覧ください(英語):DesignOps 101: Guide to Design Operations.(DesignOps入門)
そこで本記事では、DesignOpsとは何か、そして組織内のデジタルデザインシステムを改善するために DesignOpsをどのように活用できるかについてお話します。適切なDesignOpsソフトウェアの使用とともに、チーム間の連携や目標設定、情報交換システムなどの領域について見てきましょう。
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DesignOps とは
「DevOps」については聞いたことがあるかもしれませんが、「 DesignOps 」とは何でしょうか。
DesignOps(Design Operationsの略)とは、製品デザインを効率化してビジネス価値を上げるために、デザインプロセス、人材、テクノロジーを最適化することであり、主に以下のようなことが挙げられます:
- 適切なスキルセットと共通の目的を持つ人材を集めたチームを構築する
- ミスコミュニケーションやサイロ化など、業務上の非効率を減らす
- そして、おそらく最も重要なことだが、効率的なデザインワークフローを構築する
DesignOps は比較的新しい用語であるため、どのようにして誕生したのかと疑問に思われるかもしれません。
かつてデザイナーは、UXリサーチを行ったり、UXストーリーを書いたり、ワイヤーフレームを作成したり、多くの役割を担っていました。このアプローチは一部のチームでは今でも有効かもしれませんが、規模が大きくなると非生産的になります。そこで DesignOps が登場し、チームワークをオーケストレーションし、明確な構造と役割を構築してくれます。
とはいえ、DesignOps はデザイン組織だけに許された、孤立した「デザインチームだけの」エクササイズではなく、他のステークホルダー(特にソフトウェアデベロッパー)との多くの情報共有が必要です。一連のプラクティスに従うことで、デザイナーはこれらのやりとりの質を上げ、効果的な目標の達成に集中し、他のイニシアティブのために時間を解放することができるのです。
デザインオペレーションが台頭してきた理由
まず第一に、ビジネスとユーザーの両方の要件がより複雑になってきています(これは、顧客がより厳しくなってきているということでもあります。)。PwCのレポートによると、顧客の3人に1人は、たった1度でも顧客体験がよくなかっただけでその企業を去ってしまいます。当然のことながら、顧客の期待に追いつくという課題で、製品開発のライフサイクルは加速されます。また、チームがその増大する仕事量に追いつこうとするため、デザイナー間やデザイナーとデベロッパーの間でミスコミュニケーションが発生するリスクも出てきます。
また、チームは一貫性のない要件に基づいて孤立して作業してしまう可能性があり、これは納品スケジュール、ひいては UX に悪影響を及ぼしますが、DesignOps のプラクティスで、企業はこのようなボトルネックを克服し、デザインチームと開発チームの調和を生み出すことができます。
それでは、DesignOps管理の役割を詳しく見ていきましょう。
DesignOps の役割
DesignOps 管理の主な役割は、デザインチームが障害や気が散ることなく自分の仕事に集中できるように、デザインチームの時間を守ることです。詳しくはDesignOps 101 の電子書籍をご覧ください。本記事では、DesignOps の役割について見ていきます:
運営管理
この役割には、デザインチームの長期的な目標と、それを達成するための明確なデザインロードマップを作成することが含まれます。また、デザインチームの人数を評価し、スキルギャップを特定するのも仕事です。
プロセスデザイン
DesignOps は、デザインシステムを構築し、チームが必要とするデザインツールをマッピングすることで、デザインプロセスの計画や管理を行います。また、デザインチームがプロダクトチームや組織内の他のチームとどのように連携すべきかのフレームワークを作成します。
プロジェクト管理
DesignOps はデザインワークフローを担当し、プロジェクトを割り当て、スケジュールを設定し、ボトルネックを取り除きます。そして DesignOps チームは毎日スタンドアップミーティングを組んでデザインプロジェクトの進捗を確認します。また、デザインスプリントを計画して遂行します。
コミュニケーション戦略の策定
DesignOps のマネージャーは、デザインチームと組織の他の部分との連絡役となり、デザインの価値を伝え、チームミーティングのアジェンダを設定します。
デザインリーダーは、プロダクトマネージャーや製品開発チームとの円滑なコミュニケーションを確保し、 DesignOps は、デザインチームに必要なファイルやリソースを全て簡単に検索できるように保管するシステムを構築します。
新入社員の受け入れ
新しいスタッフのオリエンテーションやトレーニングを行い、デザインチームにフィットするようにします。UI デザイナーや UX デザイナーなど、新しいデザインスタッフを雇用することも、彼らの任務の一部です。
デザインチーム文化の構築
DesignOps チームは、デザインチームの専門的な能力開発のためにワークショップやトレーニングを開催しています。また、チーム内のデザイナーに専門的かつ精神的なサポートを提供し、デザインチーム内の共同体意識を醸成するためにチームの関係構築に向けた活動を企画します。
予算配分と管理
DesignOps は、デザインチームの運営にどれだけのコストがかかるかを設定し、そのコストの正当性を確認します。そして予算が承認されると、その予算をデザインチーム内でどのように分配するかを担います。
法務
法務チームと協力して、ユーザーテスト時に使う NDA(秘密保持契約) や参加者同意書を作成します。
調達プロセスの管理
調達部門と連携し、デザインチームが購買決定を下す方法を効率化します。
IT とセキュリティ
デザインチームの技術ロードマップを策定し、IT部門と協力してデザインツールの互換性とセキュリティを確保します。
デザインのワークフローと業務を改善するヒント
以上のことを念頭に置いて、組織で DesignOps の実践を改善するのに役立つヒントを見ていきましょう。
1. デザイナーをデザインに集中させる
当たり前のことのように思えるかもしれませんが、前述のように、デザイナーに複数の役割を期待する企業もまだ存在しており、時には、一人のデザイナーがユーザーリサーチを行い、情報アーキテクチャや UI をデザインし、UXライティングを担当することもあります。
このやり方は、小規模なチームや初期段階のスタートアップであれば効果的かもしれませんが、拡張性のある方法ではないことを覚えておいてください。長期的に見れば、デザイナーに他の仕事を負担させることは、彼らの仕事の質を下げることにもなりかねません。
2. デザインプロセスの効率をチェックする
組織では様々な製品デザイン・開発の手法が用いられ、デザイン思考プロセスに従う組織もあれば、Google のデザインスプリントが中心に据えられた組織もあると思われます。
つまり、最善の方法を適用することが重要だということです
DesignOpsによって、デザインワークフローの非効率性がわかり、それを取り除くことができます。これにより、デザインチームはより少ない時間とリソースでより多くのことを達成できるようになります。そしてその結果、作業とチームのパフォーマンスが最適化されることで、不必要な雇用の回避につながる可能性があります。
3. リモートでの製品デザインの効果的な連携にツールを使う
小規模な組織であれば、デザイナー同士の連携は自然に行われるかもしれませんが、大規模な(特に遠隔地の)チームではそうはいきません。効果的な連携を行うには、デザイナーやその他の製品開発チームメンバーに適切なツールセットを装備させることが重要です。ここで、DesignOps ソフトウェアが非常に大きな価値をもたらします。
UXPin Merge はそのようなツールの一つです。まず、デザイナーはソフトウェアデベロッパーの Git レポジトリや Storybook からインポートした UI コンポーネントを使うことができます。ゼロからプロトタイプを作るのに時間をかけるのではなく、実際のコードで作られた要素を使って直接デザインすることができ、そうすることで、チームは実際のデザイン作業や、コード化された製品との一貫性を保つことに、より多くの時間をかけることができるようになります。
とはいえ、ツールはパズルの一部に過ぎず、残りの要素は、次に述べる正しいコミュニケーション慣行に従うことにあります。
4. 連携のルーティーンを確立する
アジャイルチームで通常行われる毎日のスタンドアップや週次ミーティングなどの連携のルーティーンは、デザイナーの定期的なステータスのアップデートの共有や、(必要であれば)サポートの依頼を促します。
効果的な連携のルーティーンをどのように浸透させることができるかを示す例は、他でもない Google にあります。インターンからスタートし、現在は巨大テック企業でインタラクションデザイナーとして働くSophia Chiu氏は、ルーティーンでチームの他のメンバーとの共通の土台を見つけることができたと言っています。
「毎週、UXスペシャリストは自分のデザインイテレーションをみんなの前で発表し、ブレーンストームとフィードバックセッションを行う機会があります。その後、小規模なグループで作業した後、そのデザインを全体の部門横断的な製品開発チームと共有することもできます。」
これは、チームメンバーの間にオープンなコミュニケーションの流れを作ることができる数多くの方法のうちのほんの一例です。
5. 全デザイナーが、昇進のための明確なキャリアパスを持つようにする
適切なスキルセットがある人材を雇用するのは簡単ではありませんが、その人材を維持するのはさらに大変です。幸いなことに、DesignOps のプラクティスで、明確なキャリア開発パスの作成によって、こういった課題に取り組むことができます。デザインプロセスが成熟するにつれて、例えばチームはデザイナーが新しいスキルを習得できるような、より専門的な役割を特徴とすることができる、その一方で、より経験豊富な人材は、より上級の役割に昇進する機会を得ることができます。
6. デザイナーに連携を促す
ペアプログラミングは、バグやエラーを減らす方法としてデベロッパーの間で頻繁に使われていますが、DesignOps では、デザイナーはデザイン作業の効率を上げるために似たようなモデルを採用することができます。
そんなペアデザインのモデルを以下に3つ挙げてみましょう。
(1)ジェネレーターとシンセサイザー
このモデルでは、2人のデザイナーがペアを組み、できるだけ多くのデザインを生み出そうとして、それと同時に、その評価や統合をして、最良のものを生み出します。1人のデザイナー、すなわち「ナビゲーター」は、ブレーンストームとアイデア出しに専念し、もう一人のデザイナーは「シンセサイザー」として、そのデザインの検証のために分析して質問を投げかけます。このアプローチで、2人のデザイナーがアイデアを出し合い、それらを効果的に評価することができます。
(2)分野横断的なペアリング
この方法は、さまざまな分野を専門とする製品開発チームのメンバーに適しており、デザイナーでも非デザイナーでも使えます。例えば、極めて専門性の高い分野のデザインを行う場合、デザイナーは、デザインに貴重なインサイトを与えてくれる分野の専門家とペアを組むことができます。
また、デザイナーは、フロントエンドエンジニアとペアを組むこともできます。このようなクロスファンクショナルなチームでの演習で、デザイナーはワイヤーフレームではなく、実際にコード化された UIを試す機会が得られます。
(3)ペアスケッチ
デザイナーは「ペアスケッチ」という手法を使って、一緒にワイヤーフレームを作成することができます。このモデルでは、片方のデザイナーがナビゲーターの役割を担ってコンセプトを説明し、もう片方がそれに従ってスケッチを作成します。次に、2人は役割を交代し、同じプロセスを繰り返します。
7. デザインチームに明確な目標を設定する
会社やプロジェクトの目標を明確に伝えることは、デザインチームにとって大きな動機づけとなります。なんといっても、それで自分たちの貢献の意義を理解することができますからね。
OKR(目標と主要業績)は、より大きな、チーム横断的な目的意識を達成する1つの方法として挙げられます。
個々の(つまり、従業員ごとの)OKR で、デザイナーが、自分の仕事の目標が、より大きなデザインパズルの要素として、どのように当てはまるかを把握することができます。その結果、自分の仕事がプロジェクト全体の成果にどのように貢献しているかがわかります。
とはいえ、目標の達成状況を測ることも重要です。例えばチーム内の進捗状況を表示するメトリクスダッシュボードで、チームメンバーのモチベーションが維持され、どこで遅れをとっているかがわかります。
8. チーム横断的な情報共有システムを構築する
サイロを取り除くことは、おそらく、DesignOps 戦略の一環として情報共有システムを構築する最も重要な理由です。 その重要性を説明するために、もう一度 DevOps(ソフトウェア開発オペレーション)の世界からのアナロジーを参照してみましょう。
Samanage社 の マイケル・マジャール 氏は、「サイロの中では、開発チームは責められることを恐れてソフトウェアのバグをオペレーションに報告しない可能性があり、正直でオープンな情報共有システムがなければ、ワークフローが遅れるだけでなく、誤報の可能性も上がります。」と言っています
同じことがデザインチーム内でも起こる可能性があり、デザインチームは、進行中の状況を他のメンバーに知らせないかもしれません。例えば、ユーザビリティの不具合に遭遇した場合、デベロッパー、デザイナー、運用担当者は全員集まって、例えば以下のようなことについて話し合うべきです:
- 金銭的な損失の有無
- 全体的な UX への影響
- ユーザー離れのリスクの有無
- 修正にかかる時間と費用
チーム横断的な明確な情報伝達システムで、エンドユーザーへの影響を最小限に抑えながら、積極的に問題を特定して修正することができます。
9. 共有語彙の作成を検討する
一般的なコンテンツマーケティングチームには、編集ガイドラインがあり、それに従って効果的なコミュニケーションを行い、正しいコミュニケーションのスタンダードを保つことができます。同様に、デザインチームもガイドラインと共通のデザイン言語を取り入れて、全プロジェクトで一貫性が保たれるべきです。
一例として、Airbnb では DLS(デザイン・ランゲージ・システム)が採用されており、これは、きちんと確立された原則とパターンに準拠した一連のコンポーネントで構成されています。DLS によって、全従業員が組織内の全部署で理解できる共通の語彙を使用できるようになり、それによって、曖昧さや矛盾が排除されながら、コミュニケーションの質が大幅に上がります。
UXPin Merge で DesignOps を拡張しよう
顧客が求めるものが厳しくなったり、新製品の発売が早まったり、製品ライフサイクルが短くなるなど、今日の企業が直面する課題はどんどん増えています。このような課題に取り組む方法の1つとして、DesignOps の導入が挙げられ、それでデザインワークフローの改善だけでなく、デザイナーが最も得意とするデジタル製品のデザインに集中できるようになります。
これにより、顧客のニーズに完璧に対応し、直感的な使用が可能な製品やサービスを構築することができ、ユーザー体験にプラスの影響がもたらされます。デザイナーとソフトウェアエンジニアの連携がスムーズになり、デザインワークフローが改善されるツールとして、ぜひ UXPin Merge をご検討ください。