インタラクティブなプロトタイプで、開発前にデザインを改良することができることから、時間とリソースの節約になります。プロトタイプをテストする効果的な方法としては、以下の5つが挙げられます:
- 対面ユーザーテスト:ユーザーを直接観察し、ユーザビリティに関する詳細なフィードバックを得る。
- セルフガイド型ユーザーテスト:Maze や UserTesting などのツールを使って、大規模なリモートテストを実施する。
- UI 要素のスプリットテスト:ボタンやレイアウトなどのデザインのバリエーションを比較してパフォーマンスを最適化する。
- ユーザー行動分析:ナビゲーションパスやタスク完了率などのメトリクスを追跡し、ユーザーの行動を理解する。
- アクセシビリティテスト:デザインが WCAG 基準を満たしていることを確認する。
テスト方法の簡単な比較
手法 | コスト | インサイトの種類 | 最適な用途 |
対面テスト | 高 | 定性 | 複雑な統合 |
セルフガイド型テスト | 低 | 広範、定性 | 大規模なフィードバック |
スプリットテスト | 中 | 定量 | UI 最適化 |
行動分析 | 高 | 定量 | ユーザーの行動傾向の特定 |
アクセシビリティテスト | 中 | コンプライアンス重視 | インクルーシブデザイン |
重要なフローについては対面テストから始め、より幅広いインサイトのためにリモート法や分析に広げていきましょう。そしてアクセシビリティテストにより、プロセス全体を通して包括性が確保されます。
目次
例を使った簡単なユーザビリティ テスト ガイド (リモート & 対面)

1. 対面ユーザーテスト
対面式のユーザーテストは、インタラクティブなプロトタイプを評価する最良の方法の1つであり、これでユーザーがデザインにどのように関わるかについての詳しいフィードバックが即座に得られます。この方法では、管理された環境で参加者を直接観察し、彼らの発言と行動の両方を記録します。
対面テストが効果的な理由は何でしょうか?対面テストだと、他の方法では見逃してしまうような微妙なユーザビリティの問題が明るみになります。
対面テストセッションを成功させるには、以下のように行いましょう:
- 構造化された環境を設定する: Camtasia や OBS Studio などの画面録画ソフトウェアのようなツールが備わっている管理された空間を使う[5]。
- Think-Aloud プロトコル(思考発話法)を奨励する: 参加者がプロトタイプと対話するときに、考えを言葉にするようにお願いする。これで、彼らの思考を理解できるようになる[10]。
- 複数のデータポイントを集める:タスク完了率、エラー数、ナビゲーションパターン、ファーストクリックの正確さなどのメトリクスを定性的な観察と組み合わせる。
調査によると、たった5人の参加者によるテストで、UX の問題の85%が見つかるそうです[9]。
テスト中に重点を置くべき点について、以下に簡単にまとめました:
メトリクスの種類 | 追跡事項 | 重要な理由 |
パフォーマンス | タスク完了時間、エラー率 | ユーザビリティの課題を正確に特定するため |
行動 | ナビゲーションパス、ためらいポイント | ユーザーが混乱する領域を強調するため |
感情 | 表情、言葉によるフィードバック | ユーザー満足度を測定するため |
テストの司会をする際は、参加者に影響を与えないよう、中立的な口調を保ちましょう。また、チームで調査結果の検討や分析ができるように、セッションは(同意を得て)必ず録音しましょう。
対面テストは、リモートメソッドよりも多くの時間とリソースを要しますが、複雑なインタラクションや物理的な製品のインサイトを明らかにするのに特に有用です [2]。よりシンプルなプロトタイプの場合だと、リモートテストの方が適しているかもしれません。
2. セルフガイド型ユーザーテスト
より多くのユーザーへのアプローチが必要なプロジェクトでは、セルフガイド型テストが対面式の方法を効果的に補うことができます。このアプローチでは、実際のユーザーが自然な環境でデザインとどのように相互作用するかを観察することができます。
セルフガイドのセッションは一般的に短く、モデレートされたテストの一般的な45~60分と比べて、約15~30分です[4]。また、Lookback.io、UserTesting、Maze などのツールには、セルフガイド型テストがより簡単で効果的にできる機能が備わっています:
機能 | 目的 | 利点 |
スクリーン録画 | ユーザーインタラクションの追跡 | ナビゲーションパターンの分析ができる |
ヒートマップ生成 | クリックアクティビティのマッピング | 多く使われるインターフェース要素の強調表示 |
タスク分析 | タスクの完了の監視 | プロトタイプのパフォーマンス評価 |
調査統合 | ユーザーフィードバックの収集 | インサイトと提案の収集 |
最良の結果を得るには、指示が明確で実行可能であることを確認しましょう。例えば、「インターフェースを探索する 」ではなく、「新しい連絡先を見つけてアドレス帳に追加する 」といった具体的なタスクでユーザーを案内しましょう。
効果的なタスク作成のヒント:
結果を確認するときは、個々の回答ではなく、複数のユーザー全体の傾向を特定することに重点を置きます。その際、UsabilityHub や Hotjar のようなツールだと、ヒートマップやセッションの記録を通じてユーザーの行動を視覚化することができることから、混乱や摩擦のある領域を特定しやすくなります[3]。
「セルフガイド型テストでは、現実的な設定でユーザーの行動を捉えることができるため、管理された実験室環境よりも信頼性の高いインサイトが得られる可能性があります。」
この方法には明確な利点がありますが、トレードオフがあります。例えば、セッション中にフォローアップの質問をすることができません。これに対処するには、アンケートに自由形式の質問を含め、ユーザーに詳細なフィードバックを提供するよう促しましょう[2]。さらに、画面や Web カメラの録画を使うと、ユーザーの反応や行動をより理解しやすくなります。
3. UI 要素のスプリットテスト
スプリットテストでは、行動データを取り込み、それを使ってデザインの決定を改良します。このアプローチでは、特定のインターフェース要素のさまざまなバージョンを作成し、どちらが実際のユーザーによりよく機能するかを確認します。
Invesp 社の調査によると、77%の企業がデジタルインターフェースの改善すに A/Bテスト を利用していることがわかりました[8]。これで、A/Bテストが UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上にいかに効果的な手法であるかがわかります。
プロトタイプのスプリットテストを実施する際は、ユーザーの行動に直接影響を与える要素に焦点を当てましょう:
UI 要素 | 変数 | 対策 |
CTA(行動喚起)ボタン | 色、サイズ、位置 | クリックスルー率 |
フォーム | フィールドの配置、検証 | 完了率 |
ナビゲーション | メニュー構造、ラベル | タスクにかかった時間 |
コンテンツのレイアウト | 視覚的な階層、間隔 | エンゲージメント時間 |
タイポグラフィー | フォントスタイル、サイズ | 読みやすさのスコア |
たとえば、Spotify では、チェックアウトフローのプロトタイプ作成中にさまざまなボタンのデザインをテストすることで、プレミアムコンバージョンが46% 上がりました。
正確な結果を得るには、以下のような主要なテストガイドラインに留意してください:
- 95%の統計的有意性を目指す [2]
- すべてのバリアントでテスト条件を一定に保つ
- 定量的指標と定性的なインサイトを組み合わせる
Optimizely、VWO、Google Optimize のようなプラットフォームだと、スプリットテストの設定と管理がしやすくなり、このようなツールで、ユーザーがプロトタイプとどのように相互作用するかを追跡するための詳細な分析得られます。そしてそのデータは、行動インサイト(次のセクションで説明)と連動しています。
テスト結果を見直すときは、数字だけに注目せず、その変更が、時間の経過とともに、全体的なユーザー満足度やタスク効率にどのような影響を与えるかを考えましょう。
4. ユーザーの行動分析
スプリットテストで、ユーザーがどの選択肢を好むかがわかりますが、ユーザー行動分析では、その選択肢が機能する理由をより深く掘り下げます。実際のユーザーインタラクションを追跡することで、デザイン上の仮定を確認したり、疑問を呈したりすることができます。そして74%の企業が行動分析のツールを使っており[11]、以下のような重要なメトリクスに注目しています:
- エンゲージメント時間:プロトタイプの特定の部分でユーザーがアクティブに留まる時間。
- クリックスルー率:クリック可能な要素を操作するユーザーの割合。
- ナビゲーション経路:ユーザーがデザイン内で辿るルート。
- タスク完了率:ユーザーが特定のタスクを正常に完了する頻度。
プロトタイプでの分析の使い方
ユーザー行動分析を最大限に活用するには、以下の手順に従いましょう:
- 追跡ツールを直接埋め込む:プロトタイプ内で Fullstory や Hotjar などのプラットフォームを使って、ユーザーインタラクションを監視する。
- 重要なアクションに焦点を当てる:ボタンのクリックやフォームの送信など、テストの目標に関連するイベントを追跡する[8]。
- 行動データをパターンと比較する:メトリクスと定性的なインサイトを組み合わせる。たとえば、ユーザーがタスクに多くの時間を費やしているにもかかわらず、繰り返しクリックしている場合は、インターフェースがわかりにくい可能性がある[4]。
このようなインサイトは、ユーザーの行動の背後にある理由を説明することで、スプリットテストの数値以上のものになります。そしてこのデータを以前の方法からのフィードバックと組み合わせることで、デザインの効果について総合的な見解を得ることができます。
5. アクセシビリティテスト
アクセシビリティテストは非常に重要です – 米国の成人の約26%に何らかのハンディキャップがあります[9]。ユーザーの好みに関するスプリットテスト(セクション3参照)とは異なり、アクセシビリティテストでは、能力に関係なく、誰もが製品を使えるようにすることに重点を置きます。
主なテスト分野
WCAG 2.1 ガイドライン[2][8]では、重点を置くべき主要領域が以下のように概説されています:
- 視覚面でのアクセシビリティ:Stark や Color Oracle などのツールを使って色のコントラスト比を確認する。標準テキストの場合は少なくとも4.5:1のコントラスト比を目指す [7]。また、200%まで拡大してもテキストが明瞭で読みやすいことを確認する。
- キーボードナビゲーション:マウスなしでもインターフェースが機能することを確認する。タブ順序、フォーカスインジケーター、ドロップダウンメニューなどのインタラクティブな要素をテストして、簡単にナビゲートできることを確認する。
- スクリーンリーダーの互換性:Windows の場合の NVDA や Mac の場合の VoiceOver などのスクリーンリーダーを使って、全コンテンツがアクセス可能であることを確認する。フォームのラベル、エラーメッセージ、状態の変化などの動的コンテンツに細心の注意を払う[5]。
- モーションとアニメーション:アニメーションを一時停止または無効にするコントロールを含める。前庭障害のあるユーザーに不快感を与えないように、アニメーションの継続時間は5秒未満にする。
アクセシビリティテストを機能させる
英国の GOV.UK プラットフォームは、自動と手動のテストを組み合わせることでアクセシビリティの問題を40%削減することに成功しました[13]。以下がその方法です:
- 潜在的な問題の速やかな把握には、WAVE や Lighthouse(灯台) などの自動ツールから始める[13]。
- 詳細なアクセシビリティチェックリストを使って手動テストを続行する[1][4]。
- 直接フィードバックを得るのに、ハンディキャップのあるユーザーをテストプロセスに呼ぶ[6]。
- 調査結果をすべてドキュメント化し、構造化されたアプローチのために WCAG 基準にマッピングする[3]。
アクセシビリティのよくある問題
アクセシビリティの一般的な問題とそのテスト方法について、以下に簡単にまとめました:
問題の種類 | テスト法 | 成功基準 |
色のコントラスト | 自動ツール | 最低でも 4.5:1 のコントラスト比[7] |
キーボードアクセス | 手動テスト | 全機能が完全に操作可能 |
スクリーンリーダー | NVDA/VoiceOver | 正確な内容の発表[5] |
タッチターゲット | 手動測定 | 最小サイズは 44×44 ピクセル |
テスト方法の比較
プロトタイプの評価を計画する際、チームは前述の各方法の主要な要素を検討すべきであり、各テスト手法には、状況に応じた特定の強みがあります。
コストとリソースの考慮
テスト法 | 初期設定のコスト | スケーラビリティ | 一般的なサンプルの種類 |
対面ユーザーテスト | 高 | 低 | 様々 |
セルフガイド型テスト | 低 | 高 | 様々 |
スプリットテスト | 中 | 高 | 様々 |
ユーザー行動分析 | 高 | 高 | 様々 |
アクセシビリティテスト | 中 | 高 | 様々 |
インサイトの種類
- 対面テスト:ユーザーを直接観察することで、詳細で質的なフィードバックを得られる。
- セルフガイド型テスト:より広範囲だがそこまで詳細ではないインサイトが得られる。
- ユーザー行動分析:ユーザーの行動や離脱などの定量的なパターンに焦点が当てられる。
- アクセシビリティテスト:インクルーシブデザインの原則への準拠が目標[1][5][13]。
目標に合わせた方法
- UI 最適化:スプリットテストは、特定のインターフェース要素の改良に最適[13]。
- 行動分析:分析により、傾向や、ユーザーが離脱する領域を特定できる[12]。
- 包括性:アクセシビリティテストにより、デザインが多様なユーザーのニーズと基準を満たしていることを確認できる[9]。
推奨される実装手順
- 重要なユーザーフローの検証には、対面テストから始める。
- リモートテストで調査結果を広げて、より広範囲を押さえる。
- 分析を使って、進行中のパフォーマンスと動作の傾向を追跡する。
- アクセシビリティ テストを定期的に実施して、包括性を維持する。
Airbnb の戦略にヒントを得たこの段階的なアプローチは、ユーザビリティの向上とリソース効率のバランスを取りながら、包括性の要件に対応します。それによって、チームはリソースを過度に拡張することなく、包括的なインサイトを集めることができます。
まとめ
直接観察から自動分析まで、この5つの方法を使うことで、チームは効率的でユーザーに優しいプロトタイプを開発することができます。例えば、構造化テストは、問題の早期特定や本格的な開発前のデザイン改良によって、開発時間を最大50%短縮することができます[9]。
統合のベストプラクティス
最良の結果を得るには、さまざまな方法を組み合わせて、それぞれの強みを発揮させましょう。例えば対面テストから始めて主要なユーザーフローを洗練させ、次にリモートテストを使ってより多くのオーディエンスで検証します。このハイブリッドなアプローチは、Airbnb でおなじみの戦略を反映しています。また、分析を追加して、長期にわたってパフォーマンスを監視し、開発のあらゆる段階でアクセシビリティのチェックを行うようにしましょう。
リソースと時間に関する考慮事項
テスト法 | 必要なリソース | 時間枠 |
対面テスト | 高 | 即時 |
セルフガイド型テスト | 中 | 1〜2週間 |
スプリットテスト | 中 | 2〜4週間 |
行動分析 | 高 | 進行中 |
アクセシビリティテスト | 中 | 1〜2週間 |
注目すべき新しいトレンド
AI を駆使したテストツールと高度なアナリティクスで、プロトタイプの評価方法が変わりつつあります。このようなツールは、ユーザーの行動パターンをより徹底的に分析してインサイトを自動提供することから、評価プロセスがよりスマートかつ速やかになります。
リソースを最大限に活用する
主要なユーザージャーニーに焦点を当て、定性的なインサイトとデータ駆動型の測定基準のバランスをとり、開発プロセス全体を通じてアクセシビリティを優先しましょう。このアプローチにより、充実した効率的なプロトタイプ評価が実現します。
Q&A
プロトタイプをどのようにテストしますか?
次の方法を使ってプロトタイプをテストするといいでしょう:
- ユーザーを直接観察する:ユーザーがプロトタイプとどのようにやり取りするかを観察して、ユーザビリティの問題を特定する(セクション1を参照)。
- リモートテストを実施する:プロトタイプをリモートでテストするユーザーからフィードバックを集める(セクション2を参照)。
- UI バリアントを比較する:さまざまなデザインバージョンをテストして、どのバージョンのパフォーマンスが優れているかを確認する(セクション3を参照)。
- インタラクションデータを分析する:ツールを使って、ユーザーがプロトタイプをナビゲートして操作する方法を評価する(セクション4を参照)。
- アクセシビリティを検証する:どんな能力があるユーザーでもデザインを使えることを確認する(セクション5を参照)。
このようなテクニックを組み合わせて使うことで、プロトタイプのパフォーマンスと使いやすさに関するより幅広いインサイトが得られます。
ユーザーテストツールとは何ですか?
ユーザーテストツールで、次のような機能が備わっていることによってプロトタイプの評価ができます:
機能 | 目的 |
セッション記録 | 確認のためのユーザーインタラクションの追跡。 |
タスクガイド | テストタスクの構造化とガイドを支援。 |
アナリティクス | ユーザビリティとパフォーマンスのメトリクスの測定。 |
リモートアクセス | 世界中のユーザーからのフィードバック収集の実現。 |
ツール選択の際には、プロトタイプの複雑さと必要なフィードバックの種類を考慮しましょう[13]。
関連記事(英語)
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